子どもを性被害から守るために、大人がすべきこと
                       

 「子どもを性被害から守る―大人がすべきこと」という小笠原和美・慶大教授の講演を、「女性の健康・子育てWG」(私が座長)で聴いた。
 もともと警察官僚で、「日本では性暴力を防ぐ努力が足りない!」感じたことがきっかけで、このテーマの専門家になったという。現場感覚があるから、話がリアルでわかりやすい。

 面識がある、「優越的な立場の者」による加害が圧倒的に多い。
 「これは身体にいいことだよ」と医師がだましたり、「逆らうなら、もう教えないぞ」と教師が脅したり、「これは愛情だよ、どこの家でもやっているよ」と父親が言いくるめたり。子どもにとって「目上の人」に対する拒絶が困難なことに付け込む。子どもたちが「目上の人」に抵抗するのは困難だ。
 子どもたちの多くは、被害を訴えられず沈黙を強いられてきた。

 「しゃべったら写真をばらまくぞ」と脅される場合以外にも、性暴力被害を打ち明けるのが難しいのは、「自分が原因を作ったと責められないか」「なぜ逃げなかったのかと責められないか」「噂話や嘲笑の対象にされるのではないか」「打ち明けた相手がちゃんと受け止めてくれるかわからない」という不安からであり、安心して打ち明けられる場や相手が必要だと、小笠原さんは説く。

 被害者が年少で、「被害」と認識できないこともあり、特に、親しい人による「性的虐待」の場合、誰にも言えないまま時効が成立してしまうことも多くある。
 DV虐待の激しい家庭で、4歳から9年間、養父による性暴力に遭いながら、「口に出したら私もお母さんのように殴られる」という恐れから口にできず、ある時、母親が気づいて事件化した事例も。
 
 被害を拡大させないためにやらなければいけないのは、①72時間以内に病院に行き、緊急避妊をする②犯人検挙のための物的証拠として、「その時着ていた服と下着を残しておいてほしい」と小笠原さんは言う。
 それに加え、周囲の人たちが、「もっと気をつけていれば被害にあわなかったのに」などといった言葉で、心の傷を深めないことが必要だ。こうしたことを、あらかじめ知っていれば、手遅れを防げる。そして、小中高校生への教育を行うだけでなく、親たちにも「子どもが性暴力にあわないため」及び、「もし性暴力にあったらどうするか」についての教育が必要だ。
 水着で隠れる部分を「プライベートゾーン」と呼び、ここに触られそうになったら、「イヤと言う」「逃げる」「誰かに相談する」ということを予め、子どもたちに教えておくべきである。

 出席議員からの質問に答えて、小笠原さんは、「加害者はいきなり、どこかに連れ込んで性暴力を振るうわけではない。最初は、頭や肩、太ももなどをなでたり、教師が小1の子を膝の上に乗せたり、そういう徴候から「危ない」と周囲が判断すべきだと、語った。

 彼女が新聞記事などをもとに丹念に調べて得た実例は衝撃的だった。
 広島県の42歳の小学校教師は20年間にわたり、「撮った写真をばらまく」などと脅して、校舎内や車内で教え子の女児に性的暴行を繰り返した。
 「27人に対してやった」と供述。400本以上のビデオと、勤務した5つの小学校の卒業アルバムから女児を特定。
 強姦45件、強姦未遂12件、強制わいせつ25件などで懲役30年の実刑が確定した。しかし、起訴は被害者10人分のみだった。

 事件が発覚したのは、最後の被害者が中学に進んでから、後遺症のフラッシュバックの症状が出て、親が気づいたため。どの被害者も、それまで誰にも相談せず、病院にも行っていなかった。
 起訴に至った被害者の数が少なかったのは、時効または、当時は親告罪だったため、告訴しない被害者もいたためだという。
 被害者のうち誰かが病院に行き、「けが」がわかっていれば、強姦致傷となり、強姦より重い無期懲役にすることも可能だった。

 この事件の場合、教師は就職早々からずっと犯行を続けていたわけであり、学校では薄々気づきながら、厄介ごとを避けるために転任させるということもあったと考え
られる。
 被害が早くに明らかになって、懲戒免職になっていれば、次の被害者は生まれなかったのに、と残念でならない。

 また、小笠原さんが作成したこの記事リストには、大学時代に強制わいせつ未遂で、執行猶予付きの有罪判決を受けながら、「欠格」を隠して教員採用試験に合格し、中学校教師になり、女子生徒の着替え盗撮で逮捕された者もいる。また、元教え子への強制わいせつ事件で、免職となった元小学校教師が、執行猶予明けにすぐ、柔道整復師として患者にマッサージ名目で強制わいせつを犯し、懲役2年。ほか、過去に強姦で実刑歴のある70代医師が女性中学生に診療と称して行った強制わいせつ事件など。

 性犯罪、とくに子どもに対する性暴力は、再犯率が高く、刑務所で「希望者のみ」再犯防止のための教育を行うことになっているが、さほどの効果は上がっていない。
 外国では子どもに関わる職につくには、「無犯罪証明書」の提出が必要な国もあり、今後、研究し、日本もぜひ導入したい。

 Youtubeで予防教育の啓発映像が公開されている。小笠原さんが函館に警察官僚として赴任中につくられ、函館の風景がたくさんでてくる。
https://www.youtube.com/watch?v=WbBPOUPWUbM&feature=emb_title

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