自分で書いた遺言書を法務局が安価(3900円)で保管し、死後相続人に見せてくれる制度が7月10日スタートする。
民法で定められた遺言書には従来、①公証人役場に出向いて公証人というプロ(裁判官OBや検察官OBがなることが多い)に作成してもらって、預ける「公正証書遺言」と②自分で書き、自宅などに置いておいておく「自筆証書遺言」の2種類がある。
公正証書遺言は内容の不備をなくせるが、手間がかかり(身内以外の証人も2人必要)、財産や相続人の数に応じた手数料も必要。作成件数は、平成10年には年間で約5万5000件ほどだったが、増え続けて最近は「終活ブーム」もあり、毎年約11万件前後作成されている。
自筆証書遺言は自分で書けるのでラクだが、紛失したり、死後、家族に気づかれなかったり、改ざんの恐れもある。また、本人の死後、家庭裁判所の「検認」という手続きを経なければ、遺言書として使えない。遺言書の名前や本文が手書きでなく活字だったり、押印が無かったりすると無効にされる。
この自筆証書遺言の問題点を改善しようと新たにつくられたのが、法務局による保管制度だ。法務局は提出される遺言書を見て、財産目録(銀行通帳のコピーなどでよい)以外の本文や日付、氏名が自筆かどうか、押印があるかなど、民法が定めている様式の外形をチェックし、また、本人確認も行う。相続の内容の相談には乗らないし、間違いの点検もしない。
法務局は原本を保管し、画像データ化する。預けた遺言書を本人が撤回したり、住所を変更したりすることも可能。
死後、遺族の誰かが法務局に保管の有無を確認し、遺言書情報証明書の交付を受けた場合、法務局は、他のすべての相続人に遺言の存在を通知し、全員が閲覧できるようにする。遺言書情報証明書は、不動産の登記や銀行口座の引き出しなど各種手続きに利用することができる。家裁による検認は不要だ。
遺言の保管申請をした本人が「自分の死後、A(人名)に通知して遺言書を見せてほしい」と書き残せば、法務省の遺言書保管担当が、戸籍担当から死亡情報の連絡を受け、故人から頼まれた相手に遺言書保管の事実を連絡する。
書いて預けた本人や、配偶者を含む相続人が「忘れた」とか「知らなかった」という心配を防げるのだ。
法務局がここまで「親切」にするのにはねらいがある。
深刻な社会問題となっている「所有者不明土地」が発生するのは、何代にもわたって相続登記を行わないことが大きな理由。「すぐ売るわけはなく、住んでいるままだからいいだろう」とか、「利用価値がない、売れない土地だから放っとこう」と登記しないケースがしばしばある。
しかし、親など故人が遺言書に明記していたら、放っておきづらいし、法務局も相続人に遺言書情報証明書を交付したり、法務局で閲覧させる際、「ぜひ、不動産登記の変更を」と、ひと声かけることができる。もちろん、相続争いの裁判も減らすことができる。
遺言書を預ける法務局は、自分の住所地もしくは、本籍地、または不動産を所有している地域の法務局のいずれでもよい。
制度詳細は法務省のウェブサイトに掲載。
「預けて安心!自筆証書遺言書保管制度」
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