鎌倉から現代まで「きもの」展
                       

 東京国立博物館(上野)の特別展「きものKIMONO」が見事だ。鎌倉時代から現在までの300点余りを展示。「東京オリンピック・パラリンピック2020」に合わせた日本博の一環。信長、秀吉、家康が合戦でまとったものや、幕末に将軍正室となった天璋院篤姫や和宮の着物も展示。江戸の火消しや花魁(おいらん)も登場する。

 展示品のうち、最も古いものは、鎌倉時代に後白河法皇が鶴岡八幡宮に奉納した現存最古の宮廷装束。

 ファッションモードの展開としては江戸時代が特に興味深い。武家の系譜とは別に、町人や遊女がきれいなものを着られるようになったからだ。

振袖 「白絖地若紫紅葉竹矢来模様」(東京国立博物館蔵)
振袖 「白絖地若紫紅葉竹矢来模様」(東京国立博物館蔵)
徳川家康の「胴服染分平絹地雪輪銀杏模様」(東京国立博物館蔵)
徳川家康の「胴服染分平絹地雪輪銀杏模様」(東京国立博物館蔵)
豊臣秀吉の「陣羽織 淡茶地獅子模様唐織」(東京国立博物館蔵)
豊臣秀吉の「陣羽織 淡茶地獅子模様唐織」(東京国立博物館蔵)
織田信長の「陣羽織黒鳥毛揚羽蝶模様」(東京国立博物館蔵)
織田信長の「陣羽織黒鳥毛揚羽蝶模様」(東京国立博物館蔵)
小袖 「黒綸子地波鴛鴦模様」(東京国立博物館蔵)
小袖 「黒綸子地波鴛鴦模様」(東京国立博物館蔵)

 江戸城の大奥では、身分や役職によって使用できる絹の素材や色に決まり事があり、水戸徳川家や紀州徳川家、会津松平家らに伝わった格式高い着物がずらりと並ぶ。
 天璋院篤姫(薩摩から第13代将軍徳川家定の正室に)は、雀(すずめ)が好きで、着物のほか、蒔絵(まきえ)の手提げ箱や小箪笥(たんす)にも雀をあしらっている。
 また、公武合体の象徴として、皇族から第14代将軍家茂に降嫁した和宮の小袖や打掛、帷子(かたびら)のほか、貝合わせのための貝桶や、懐紙入れなども展示してある。

 江戸幕府は、しばしば倹約令を発し、豪華な鹿(か)の子絞りや刺しゅうを禁じるなどした。
 しかし、町人の側は、禁止令を逃れつつ、色あざやかな友禅染を流行させた。尾形光琳の「光林」模様などが人気となった。

 大名にお金を貸していた豪商は、本来は武家限定の赤、黒、白の三色がさねの婚礼衣装を娘たちに着せた。

 ファッションリーダーのもう一方は、吉原の花魁(おいらん)や太夫(たゆう)といった高級遊女。かんざしや櫛(くし)で飾り、頭は3キロ、衣装は25キロ以上の重さに耐えて優美にふるまった。

 豪商の娘と高級遊女はぜいたく禁止令とは無縁だったのである。

 一方、男性のファッションとして戦国武将と江戸時代の火消し半纏(はんてん)の展示が面白い。

 戦国時代の武将たちは勇壮な姿を誇示するため、独特な意匠を流行させた。ポルトガル人が南蛮文化をもたらした時代で、その影響もあった。

 織田信長の陣羽織は、黒い羽毛を毛羽立たせて貼り付け、アゲハチョウの模様を目立たせたド派手なもので、古い書物には「大うつけ」と書かれている。豊臣秀吉は若づくり。徳川家康の服は他の2人に比べると地味だ。

火消半纏 「紺木綿地人物模様」(東京国立博物館蔵)
火消半纏 「紺木綿地人物模様」(東京国立博物館蔵)

 「火事とけんかは江戸の華」と言われた江戸で、町火消はヒーローだった。
 半纏の裏地に、竜、虎、八岐大蛇(やまたのおろち)などを退治している勇ましい絵を派手に描いている。船弁慶、八犬伝、「源頼政の鵺(ぬえ)退治」など物語から題材をとったものもある。
 町火消たちは紺地の木綿に刺子(さしこ)を施した半纏の上から水をかぶって火消しにあたり、仕事が終わると半纏を裏返して裏地の派手な絵柄を自慢げに意気揚々と帰還したのだった。

 明治の殖産興業により、安価な絹糸が大量生産されるようになった。大正から昭和初めにかけて、女学生たちが着た銘仙(めいせん)には、椿やバラ、ひまわり、帆船など、華やかな模様が描かれた。

 最後に戦後のモダン。
 赤・青・黄・黒を塗りたくったような度肝を抜かれるデザイン。岡本太郎だった。
「太陽の塔」をつくり、「芸術は爆発だ」と言った彼は成人式用の着物や浴衣などをデザインした。

 「X JAPAN」のYOSHIKIが2015年から着物を制作。ファッションショーにも参加した。ちなみに彼は呉服店の長男。派手なデザインの着物らしい形のものもあるが、ロングドレス、ミニスカートのドレスに帯風のリボンを取り付けたものも。「きもの」に定義はないのだ。

 きものは、洋服と違い、絵画を体にまとっているようなものだと思う。だからこそ、平面的な展示という方法が実によくなじんでいた。

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